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エコカフェ2009(第6回)コメどころ中空知 その現在と未来松尾啓司さん(北海道空知農業改良普及センター中空知支所長)こんにちは。私、職場では「普及センターの綾小路きみまろ」と呼ばれていまして、きょうもギャグで脱線してしまうかも知れません。ご存じのように今年の夏は低温続きで、作物にも影響したのですが、みんな、私のせいだって言うんです。「ギャグが寒すぎて、冷夏になった」ってね(笑)。 さてみなさん、ちょっと聞かせてください。お宅では地元産のおコメを食べていますか? それとも新潟とか宮城とかのおコメを買っていますか? ふーむ、半々ぐらいですね。きょうは、お帰りの際にみなさんが「明日から地元のおコメを食べたいなあ」と思うようになる、そんなお話をしたいと思います。 中空知はコメ作り適地きみまろは「あれから40年!」が決めゼリフですけれど、私はこの仕事に就いて38年になります。農業改良普及員は転勤族。新十津川町・奈井江町・沼田町・真狩村・北見市・岩見沢市・当別町・知内町、そして今年4月からまた新十津川と、全道あちこちを回ってきましたが、おかげで、コメ作りに関して、この中空知地方の条件の良さを改めて感じているところです。 ちょうどいま稲刈りの真っ最中です。報道にもあったように、今年の作柄はあまりよくありません。けさ、田んぼから刈ってきたイネですが、たとえばこれ。穂先が青いままです。いわゆる「青立ち」で、われわれは不稔粒と呼びます。稲穂の中に不稔が出ると、ほかの正常なコメ粒に過剰に栄養が届いてしまって、粘りのない、ぱさぱさした食味のコメしか穫れません。 こちらはイモチ病の稲です。穂首のところが黒くなっていて、ここからイモチ菌が侵入したんですね。ここから上の部分は稲熟がストップしてしまいます。今年はこのイモチが北空知で多く発生してしまいました。 そんなわけで全体的に作柄は悪い。でも、そんななかで、中空知地方は比較的よい方だったのです。もしかすると今年の新米で一番おいしいのは、中空知のコメ、というふうになるかも知れません。 それには理由があって、中空知にコメ作りの好条件が揃っているおかげだといっていいと思います。 ひとつは、土壌です。同じ石狩川流域でも、下流域は泥炭地帯で、うまいコメを作るのが難しい。泥炭土壌は、植物が堆積してできているので、作物にとってはいわば有機堆肥のカタマリ。生育の後半に自然に追肥されるようなもので、どうしても高タンパク質のお米になってしまうのです。いっぽう、ここ中空知は沖積平野で、低タンパクのおコメを作ることができます。 余談ですが、コメのタンパク質に関していうと、今年のトピックは何と言っても新品種「ゆめぴりか」の登場です。道産米がコシヒカリを追い越した、とまで評価されていますが、「ゆめぴりか」のうまさの秘密もタンパク質にあるんです。(イラスト)
さて、中空知地区が稲作に有利な理由のふたつめは、気象です。ほかの地域に比べて、冷たい風がそれほど吹き込んだりしません。夏に気温が十分あがるのも、有利な点です。 高度クリーン米栽培の取り組み
もちろん、農家の努力も忘れるわけにいきません。低タンパクのうまいおコメを目指して、極力肥料を減らしたコメ作りに取り組む農家が増えています。 そんな中から、私たち普及センターも協力して実践が進んでいる例をご紹介しましょう。まず、奈井江町茶志内京極地区の生産者グループ「京極特栽倶楽部」です。「高品質な農産物の安定生産」を目指して、全戸が「エコファーマー」の認定を受け、特別栽培米=高度クリーン米を作っています。 昔のやり方だと、スケジュール防除と言って、あらかじめ決まった日に決められた農薬を散布する、というのがふつうでした。しかし、いま同倶楽部は水田で「生き物調査」をして、害虫発生の兆しをつかんで初めて、必要最小限の成分の農薬を使用することにしています。また、病気を予防するのに、薬品は使わず、種モミの温湯消毒を実践しています。種モミを60度Cのお湯に10分間程度漬けて殺菌するやり方です。成果は着実に上がっていて、食味の向上と収量の安定化が数字にもはっきり表れています。 「選ばれるコメ作り」を目標に、稲ワラ堆肥による循環農法に挑戦しているのが、新十津川町の「大和地区」のみなさんです。 稲ワラ堆肥は、かつてはどの農家でも、稲ワラを馬に踏ませて作っていましたが、化成肥料とトラクターの時代になって廃れてしまいました。有機農業が再び脚光を浴びだしても、自前で堆肥を作るのは面倒ですから、稲ワラはゴミとして焼いて、代わりに高価な有機肥料を買う、という農家さんが多いんです。 新十津川には幸い、1軒ですけれど酪農農家がおられますから、そこから牛糞を運んで、稲ワラと混ぜて堆肥を作ることができます。消費者の環境保全型農業への関心が高まるなか、5年前に11haあまりだった特別栽培米水田の面積が、このやり方で昨年は42haまで拡大し、収入も3割ほど増えました。 収益アップで農家の魅力を増せとはいえ、農家の経済は依然として苦しいのです。例えばこの秋、米の不作が予想されているのに米価は低迷したまま。豊作だった昨年のコメがまだ在庫されていて、需給バランスが少し崩れているんですね。食管制度時代は1俵あたり1万8000円前後で買い取られていたのが、現在は1万円から1万2000円前後と、低い水準で推移しているのも問題です。 いま農業人口の減少と高齢化が深刻です。しかし、収益が上がりさえすれば、後継者不足の問題はなくなると思うんです。サラリーマンの給料が下がり続けている今だったらなおさら、もし儲かるなら、農業に就きたいという人は少なくないでしょう。
私たち普及センターの取り組みも、農家の収益アップを目指しています。ご紹介したような特別栽培米へのシフトにも、“消費者に喜ばれる、売れるコメ作りをして、所得を確保しよう”という狙いがあります。 さらに今後、例えば苗代を使わない「直播栽培」で低コスト化を図ったり、飼料米・バイオ燃料用米の採算性を高めたり、あるいは健康食品として注目される黒米を栽培したり、といろいろな可能性を探っていく必要があると思います。コメ一辺倒ではなく、高所得を見込める施設栽培(花きや野菜)との複合経営も視野に入れるべきでしょう。 何よりこれから大事になると思うのが、自然環境を保全・維持しようという高い意識を農家自身が持つことでしょう。 本当に安全・安心でおいしい農産物は、まず地元から評判が高まるもの。スーパーマーケットでは安さが一番の売りかもしれせんが、みなさんも、地元の生産物を選ぶときは、やはり新鮮さ・安全性・安心感を優先されてのことだと思います。ぜひ地元の農家の取り組みにいっそう関心を寄せていただき、おいしいおコメや野菜を選んで、大いに食べてください。 どうもありがとうございました。 2009年9月26日、たきかわ環境フォーラム「エコカフェ」(滝川市森のかがく活動センター)での話題提供から。(C) Hiroshi Matsuo, All rights reserved. 報道機関向け資料(pdf、76KB) エコカフェ2009リーフレット(pdf、619KB
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